Bacchus BST-62V 3TS-RE




メーカー/機種名
バッカス BST-62V 3TS-RE #none serial 1999年製
スペック
3TS(3トーンサンバースト)
材/塗装 BODY=アルダー2P
NECK=メイプル
FRETBOARD=メイプル(貼りメイプル)
FINISH=ポリウレタン/TOPのみセルロースラッカー
ピックアップ F/C/R=LindyFralin BluesSpecial
改造/交換 BRIDGE=ダイキャスト製トレモロブロック〜鉄製トレモロブロック
        〜FENDER U.S.A.製
PICK GUARD=Bacchus '64年仕様 ミントグリーン
           〜Bacchus '62年仕様 ミントグリーン
SEALD PLATE=FENDER '63年製オリジナル
BACK PANEL=FENDER U.S.A.製エイジドホワイト
PICK UP=Bacchus Alnico Special ×3
        〜LindyFralin BluesSpecial ×3
PICK UP COVER=FENDER U.S.A.製エイジドホワイト
KNOB=FENDER U.S.A.製エイジドホワイト
POT=CTS製250kΩAカーブ(EP085) ×3
JACK=SWITCHCRAFT
CAPACITOR=マイラコンデンサ
           〜オレンジドロップコンデンサ(0.47µF/600V)
内部配線をライカルワイヤーに変更
当時の定価
不明 2001年9月中古購入
コメント
 こんなギターが販売されていたことをご存知でしたか?
 これはヤマハ横浜店が1999年12月から2000年8月にかけて販売していた、初期『ビンテージシリーズ』期生産のオリジナルギターです。ヤマハ横浜店によると、仕様は上記の通りで、つまりBST-64Vと同じ。違うところはネックで、指板がメイプルになったものというわけです(1Pメイプルではなく貼りメイプルで、もちろんUシェイプ)。限定生産ということで生産本数は12本。オリジナル機のコピーということでヘッドにブランドロゴがない(通常ならネックプレートにもブランドロゴがあるのに、それもない)こともあり、シリアルナンバーがないのでしょう。ネックポケットには「Re」のスタンプのみありました。しかし'64年モデルを「BST-62V('62年モデル)」として売るのには名目上問題があるのですが・・・。(追記参照)

 見た目に分かるようにレリック仕様です。貼りメイプルのネック、ブランドロゴなし。誰のストラトをコピーしたのか、分かる人には分かると思います。そう、あの人がYAMAHAのSG-1000やSG-2000をメインにする前に使っていた、そして現在も使っているあのストラトのコピーモデルです。過去に同様のコピーモデルが、'81,'82年にTOKAIのST-70の'64年モデル,'99年にFENDER U.S.A.からMASTER GRADE SERIESで2本限定,同じく'99年にMOONからも受注生産のレリック仕様(ST-TAKANAKA)なんてのも出ていましたよね。(1999年に生産されているのが多いのはなぜ?SG-2000MT発売の影響?MOONはピンクのストラトまで再販していたし。)
 ただしそれを意図して購入したのではなく、たまたま行き着けの楽器店に行ってお世話になっている店員と中古コーナーで話していたところ、壁に掛かっていたこのギターが目に入り、「あのギター、ちょっと弾かせてもらえませんか?」と言って弾いたところ、持った時のバランスの良さ、ネックの自然な握り、各弦のテンションバランス、生の鳴りの良さ、アンプを通した時の音の良さ・・・。いきなり購入意欲を掻き立てられるこのギターに、時間も忘れて弾いている自分がそこにいました。店頭価格は49800円でしたが、「今買うなら、現状渡しでコミコミ40000円でいいよ」の一言で、「カ、カードでもいいですか?」
 ピックガードにビニールが張ったままの新品同様で、保証期間内の保証書もついていました。ネックが少し順反りで、ナットの溝の5弦が浅く、6弦が微妙に深い感じはしたものの、これらは保証が効くので、後日修理調整することにしました。話によると、前の所有者はほとんど弾いておらず、ストックしていても仕方ないので売りに来たらしい。なんとももったいない。

 さて、本人(誰か分かるよね?)と微妙に仕様の違う点を挙げると、ピックガードの色及びビス穴の位置。これぐらいでしょう。本人のピックガードは、雑誌の写真などから判断すると、ここまでミントグリーンではないように思います。ピックガードを替えようと思えば替えられますが、あまり意味もないのでとりあえずこのままに。でも'62年仕様なら替えた方がいいよね。ピックアップはノイズも少なく、カリカリせず、歪ませても芯が崩れずブーミー感のあるいい音です。日本製のピックアップも捨てたもんじゃありません。FENDER JAPANよりはるかにいい音がします。交換するとすれば、VanZandtのVintagePlusかBlues、LindyFralinのVintageHotあたりになるでしょう。それぐらい文句のない音です。

 バッカス(DEVISER)では、「もうコピーモデルは作らない。特にレリック仕様は二度と作らない。」と言いつつ、とうとう『ビンテージ・シリーズ』としてコピーシリーズを復活させました。がしかし、ヘッド形状の問題から、再び生産終了となりました。もう二度とバッカスからビンテージモデルは生産されることはないでしょう。その中でもこのギターは貴重な一本となるギターです。ちなみに、レリック仕様の限定モデルに、クラプトンの「'57BLACKIE(BST-57V BLK-RE)」などもありました。参考までに、バッカスの過去のギターはこちらにリストアップされております。
 購入後1週間でメーカーに送り、ナットとネックの修理調整を依頼しました。ついでにダイキャスト製のトレモロブロックがイヤなので、鉄製に交換しました。
 ピックガードも後々になってオーダーし、一応フルコピー状態にしております。ポット,ノブ,ピックアップカバー,ジャック,バックパネルも交換しました。ピックアップは、安価で入手できるチャンスがあったので、LindyFralinのBluesSpecialに交換しました。キャパシターは、'61年以降はセラミックコンデンサ(しばらくは0.1µF/50V)なので、『改悪』しました。最後に入手したのがシールドプレートです。'60年〜'69年頃まではピックガードの裏全面にアルミのシールドプレートを挟んでいました。これがないと雰囲気が出ません。'63年製のオリジナルが格安で手に入ったので、付けてみました。ピックガードの右上を「カット」すると、このシールドプレートが出て雰囲気が出ますよね。トレモロもFENDER U.S.A.のものに交換しました。これはオリジナルのトレモロから交換すべきです。交換したとたん、弦のテンション感も音もよくなりました。たぶんトレモロブロックの、弦の止まる深さの関係でしょう。FENDER U.S.A.のトレモロは取り付けるネジ穴位置が多少違いましたが、問題なく作動します。見た目を同じにするなら、あとはピックガードの右上先端をビス穴付近でカットして、シールドプレートが見えるようにすればいいだけです。

 ちなみに、BSTなどのシリーズのギターが「オールラッカーフィニッシュ」であるかのように錯覚しているオーナーや販売店があるようですが、バッカスブランドでは「オールラッカーフィニッシュ」は特別な場合を除き存在しません。スペックにも書いた通り、ポリウレタン塗装の上にラッカー塗装をする「トップラッカー」という塗装方法をとっております。


<<追記>> あのレリックストラトの秘密
 本人(くどい!)のストラトは'62年製という説と'64年製という説が最も多くあります。たまに'67年以降のものとか、'50年代製という的外れな説も聞きます。なぜこのような見解があるのかですが、それには「パーツ」「ネック」「ボディ」の見地から、次の7つのポイントがあります。でも、これで絞り込めるのか・・・。
    1.【11点留め3Pピックガードと、そのネジ穴の位置】
       3Pピックガードが登場するのは'59年からです。
       当初は10点止めがあったりと、仕様がまちまちでしたが、
       '63年途中まで一貫して、フロントとセンターのピックアップの
       中間あたりの左側に止めネジがありました。
       '63年途中からは、センターピックアップの横あたりに止めネジがきます。
       ゆえに、'60年製〜'62年製のアッセンブリーと推測できます。
           =このことから『'62年製』という説があります=
    2.【12フレットのポジションマーク】
       '62年製までのものであれば間隔が広いタイプです。
       '63年途中から狭いタイプになり、だんだんあの狭さになります。
       また、ポジションマークの大きさもポイントです。
       '65年途中からは、それまでのものよりもひとまわり大きくなります。
       この点においてはクレイドットとパーロイドドットでの比較なので、
       黒ドットについての比較は、参考資料不足で把握できていません。
       ゆえに、'64年製〜'65年初期製のネックと推測できます。
           =このことから『'64年製』という説があります=
    3.【指板が「貼りメイプル」である】
       '50年代製ならメイプル1Pネックです。
       1Pネックの場合、ネックの裏側からトラスロッドを埋め込み、それを
       ウォルナットやブビンガ材などででふさいだ部分があります。
       これをスカンクストライプ,スカンクライン,スカンクテイルなどと呼びます。
       ユーザーの要望が高まり、すべてローズ指板仕様になるのは'59年途中からです。
       (同時に3Pピックガード仕様にもなりました。)
       指板を貼るようになると、トラスロッドは指板を貼る前に仕込むようになり、
       あのようにネック裏のスカンクストライプがなくなります。
       最近の画像としては、アルバム『Walkin'』の裏ジャケでも確認できます。
       つまり、あのネックはメイプル1Pではなく、貼りメイプルネックです。
           =このことから『'50年代製ではない』ということになります=
       ちなみに、貼りメイプル指板は'67年からの一般オーダー仕様です。
       これは、メイプル指板に対する要望が高くなってきたための対応です。
       Jimi Hendrix の'68年製ストラトが最も有名でしょうね。
       それ以前の貼りメイプル指板仕様のネックは完全な特注仕様です。
       ピックガードの仕様が違うが、同仕様のストラトを他にも見たことがあります。
       つまり、'59年〜'67年にもメイプルネックの要望があったということです。
       なお、「ラージヘッドをリシェイプした」という説は間違い。
       '67年製以降のストラトと本人のストラトのポジションマークの仕様が
       前述のように違います。
           =このことから『'67年製以降のものではない』ということになります=
       '65年途中からはネックプレート、'68年からはペグも変わります。
       メイプル1Pネックは'71年に復活することになります。
           =このことから『'71年製以降のものではない』ということになります=
       また、「ネックを別メーカーのコピーものに付け替えた」という説も間違い。
       あのギターが登場した'75年前後にOLD Fenderのコピーを
       していたメーカーはありますが、粗悪品ではない貼りメイプルネックや、
       12フレットのポジションマークまで完コピをしていたブランドはありません。
    4.【テンションガイドとスペーサー】
       '56年途中から初期の丸型のガイドから波型に変わり、
       '63年からはその形状が微妙に変わります。
       また、テンションガイドにスペーサーが入るのは'59年以降です。
       最初は金属製でしたが、'64年からナイロン製に変わります。
       あのギターは、テンションガイドの形状が'63年以降のものと同一です。
       スペーサーの存在はDVD『晴天』の43分前後の映像で確認できました。
       ただし、材質までは確認できませんでした。
           =このことから『'63年製以降』ということになります=
    5.【3トーンサンバーストの色合い】
       黒/赤/黄の3トーンサンバーストは'58年製からのカラーです。
           =このことから『'58年製以降』ということになります=
       そのカラーの色合いは年代ごとに異なり、それは赤色に顕著に現れます。
       初期のものは退色しやすく、赤味がかった2トーンのように見えます。
       これはいわゆる「ハニーバースト」と呼ばれるものです。
       '61年から塗料が変わり、赤色の退色がなくなります。
       '63年からははっきりした赤色になり、'64年には黄色も濃くなります。
       そのため、3トーンの黒/赤/黄がはっきりとした色合いになり、
       結果、遠目ではあのように木目が見えづらくなります。
           =このことから『'63〜'65年初期製』ということになります=
       '66年頃には黄色がより濃くなり、その後赤が退色しやすい塗料に変わります。
    6.【ボディートップのコンター部(ひじの当たる所)の面積】
       '62年製ならボリュームポットの下あたりまでのびていますが、
       '63年頃からはボディー中央ぐらいまでしかありません。
       また、トップコンター部の厚みも'65年から変わります。
    7.【ボディの材質】
       大抵はこのようなパターン
           '54年〜'56年 ライトウェイトアッシュ
           '56年〜'73年 アルダー ('64年頃にバスウッド有り)

 このように考えていくと、高中正義氏(面倒くさいので書く)のオールドフェンダーは○年製と分かってしまいそうですが、答えは簡単ですのであえて書きません。'85年以降、ステージでは使われなくなったクラプトンの元祖「ブラッキー」(オークションで1億円以上で売れてしまいましたね)の例がいい参考になるんじゃないかと・・・。
 残るポイントは、『ネックデイト・ボディデイト』『シリアル』『Fenderロゴ』の3点ですが、ネックデイト・ボディデイト(ボディデイト表記は'63年製まで)は一応公表されていません。ネックプレートのシリアルは、確か「57170」か「58170」というのを何かで見たことがあるのですが、これだと'60年末期〜'61年初頭あたりになっちゃいます。この時期の仕様としては、上記の結果から外れてしまいますので、全くの見当違いです。ネックプレートは別の時代のものがつけられたか、ピックガードを含むアッセンブリー一式とともにつけられたと考えるのが自然です。ヘッドの「Fender」ロゴが残っていれば判定も早いのですが、入手当初からロゴがなくなっていたということですのでどうしようもありません。ロゴでの年代判別は、'60年まではパテントナンバーなし、'61年には2つのパテントナンバーが入り、'62年には3種類に増え、'64年後半からは「Fender」ロゴがスパロゴからトラロゴに変更になります。
 ちなみに、本人のストラトはピックアップがオリジナルのものからSeymour Duncan SSL-1に換わっています(昔の雑誌インタビューにて)。ただし、別の雑誌では「何かに換えた」と機種名を明らかにしておらず、少々曖昧です。しかもそのインタビュー記事からはかなり年月も経っていますので、また別の物に換わっている可能性もあります。加えてネックがリフレット・リフィニッシュされ、ブリッジサドルがダイキャスト(カレントタイプ)に換わっています。しばらくの間、センター用のトーンポットが折れていましたが、'03年野音では復活し、TONEノブもついていました。このノブはオリジナルのものか新品か、また他社のものかはわかりません。映像で見る限り、色合いに違和感がなかったので、オリジナルかもしれません。
 そしてとうとう2004年、ネックそのものを変えてしまい、22F仕様になってしまいました。ペグはGOTOHのマグナムロックHAPM、ストリングガイドなし、ロッド調整はヘッド側からできるようになっています。ロゴのなかったヘッドにはパームツリーのインレイと「TAKANAKA」ロゴが貼られています。しかし、太めのフレットと「貼りメイプル仕様」にはこだわっているようで・・・。メーカーはどこなのでしょうね。って、推測は簡単です。(!)



ネックポケットの「RE」のスタンプ。
ボディのフロントピックアップ部に同じスタンプ有り。
これ以外にスタンプなどの記述はありません。
シリアルもなければメーカー名すらもありません。
保証書にスタンプされた機種名。
Bacchusのサイトに“BST-62V”という機種は
リストアップされていません。
貼りメイプル指板のネック。
1Pではなく、メイプル指板です。
木目で確認できます。
惜しむべくは、六角ロッドですね。
ネック裏。
スカンクストライプがありません。
'63年10月製のFenderアルミシールドプレート。
本物ですが、余計な穴が3つ空けられているため
激安でGET!
Callahamとほぼ同価格にて購入。
裏側に鉛筆で書かれたサインとデイト。
『Jay』さんでしょうか・・・。
コントロール部に鉛筆で囲みがあるのが特徴。

これがOld Fenderに付けられた
新しいネックのヘッド部。
仕上げはオイルフィニッシュですね。
ナットは某メーカーのオイル含侵牛骨ナット
・・・のようです。
ナットやロッド調整の穴の形状から
メーカーが推測できます。
ちなみに48,000円だとか。